ABCI 3.0およびABCI-Qがスパコンランキング上位にランクイン

産業技術総合研究所(産総研)が保有する高性能計算システム「ABCI 3.0」および「ABCI-Q」が、世界のスパコン性能ランキングTOP500 Listにおいて、世界トップクラスの性能を記録しました。この結果は、スーパーコンピューターに関する国際会議「ISC HIGH PERFORMANCE (ISC 2025)」において、6月10日に発表されました。

背景と概要

産総研は、日本の人工知能(AI)技術の研究開発を加速するため、2018年より「AI橋渡しクラウド(ABCI)」の運用を開始しました。2024年4月からは、産総研の成果活用等支援法人である株式会社AIST Solutionsが運営を引き継ぎ、両者が連携して活用を推進しています。

2025年1月に、最新のAI研究開発ニーズに応えるべく「ABCI 3.0」の運用を開始、さらに、量子コンピューティングとの融合を見据えた「ABCI-Q」も構築し、2025年初夏の運用開始を予定しています。

スパコン性能ランキングでの主な結果

ベンチマーク

システム

ノード数

GPU

性能

順位

TOP500

ABCI 3.0

416

3,328

145.1 PFLOPS
(全体の54%の構成で実行)

第15位(国内2位)

TOP500

ABCI-Q

490

1,960

74.58 PFLOPS
(全体の97%の構成で実行)

第27位(国内5位)

HPL-MxP

ABCI 3.0

392

3,136

2.3628 EFLOPS(全体の51%の構成で実行)

第4位(国内1位)

HPCG

ABCI 3.0

432

3,456

2.44567 PFLOPS(全体の56%の構成で実行)

第8位(国内2位)

HPCG

ABCI-Q

495

1980

969.327 TFLOPS
(全体の98%の構成で実行)

第16位(国内4位)

(※順位は、2025年6月10日19時(日本時間)発表時点)

ABCI 3.0の特長

ABCI 3.0は、生成AIをはじめとする最先端AI技術の研究開発を強力に支援する計算環境を提供しています。国内公的機関として最高レベルのAI性能を達成し、今後のAI技術の進展に大きく貢献することが期待されています。
(参考)https://abci.ai/

ABCI-Qの特長

ABCI-Qは、量子コンピュータとAIを融合させたハイブリッド計算環境を提供します。用途に応じて複数の量子コンピュータを柔軟に使い分けることが可能で、将来の量子AI時代を見据えた先進的な取り組みです。
(参考)https://unit.aist.go.jp/g-quat/HowToUse/abci_q

用語の解説

■ TOP500 List
スパコンのベンチマーク性能値を半年ごとに世界1位から500位までランキングしているリスト。ベンチマーク指標としてLINPACK(行列計算による連立一次方程式の解法プログラム)の実行性能が用いられている。
https://top500.org/lists/top500/

■ HPL-MxP
TOP500 (LINPACK)では倍精度演算のみを用いて計算する規則だが、近年のGPU等AI向けプロセッサで導入が進んでいる低精度演算を用いて計算を加速することを認めたベンチマークプログラムである。なお、精度とは数値(実数)のコンピューター内での表現方法。倍精度は8バイト(有効桁数約16桁)、単精度は4バイト(有効桁数約7桁)、半精度は2バイト(有効桁数約3.3桁)で表現する。最新のGPUなどを用いると、半精度・単精度では倍精度よりも大幅に高速な演算処理が可能になるため、機械学習・AI分野において活用が進んでいる。
https://hpl-mxp.org/

■ HPCG
TOP500 (LINPACK)は密な係数行列から構成される連立一次方程式を解く性能指標である。一方で、HPCGは、産業利用などの実際のアプリケーションでよく使われる、疎な係数行列から構成される連立一次方程式を解く計算手法である共役勾配法を用いたベンチマークプログラムである。

■ FLOPS(Floating-point Operation Per Second, フロップス)
1秒間に行える浮動小数点演算の回数。エクサ(E)は(10の18乗)、ペタ(P)は(10の15乗)、テラ(T)は(10の12乗)を意味する。

  • 【更新日】2025年6月10日
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