サーキュラーエコノミー実現に向けたプラスチック循環
低温・常圧の革新的PETケミカルリサイクル技術で、コストとエネルギーを同時に削減。
- サーキュラーエコノミー

サーキュラーエコノミー(Circular Economy=CE)は製品、素材、資源の価値を可能な限り⾧く保全・維持するとともに、リユースやリサイクルによって廃棄物の発生を最小化しする新しい経済システムのことをいいます。CE は環境対策にとどまらず、新しい産業や雇用の創出も含む社会システムの変革を目指すものです。
CEの実現に向けては数多くの課題がありますが、原料の化石資源への依存や廃棄量の多さから考えて、プラスチック循環は特に喫緊の課題です。
産総研ではポリエチレンテレフタレート(PET)のケミカルリサイクル法を開発し、この課題解決に貢献しようとしています。
KEY POINT
- CEの実現に向けてプラスチック循環は喫緊の課題。世界中でリサイクル目標や規制が制定されている
- PET以外の素材を含む複合素材はリサイクルが難しく、そのほとんどがリサイクルされず、焼却・埋立されてきた
- 産総研のPETケミカルリサイクル法は温和な条件での解重合が可能で、複合素材からPETだけを選択的に分解することが可能
- 産総研グループでは技術の社会実装に向け、スケールアップに取り組んでいる
プラスチックリサイクルに向けた世界の動向

欧州プラスチック戦略では、2030年までにプラスチック製容器包装のリサイクル率を55%まで引き上げることが目標とされているほか、自動車に関してはELV規則案で自動車に再生プラスチックの使用が義務付けられるなどの動きがあります。日本においてもプラスチック資源循環戦略が制定されており、2030年までに容器包装のリユース・リサイクル率を60%とすることが目標になっています。
これをベースにポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)のリサイクル目標を考えると、2030年までに世界で700~1,000万t/年のリサイクルが必要となる計算です。日本国内に絞ってもPETのリサイクル必要量は約100万t/年となり、現時点のリサイクル量(42万t)の倍以上のリサイクルを実施しなければなりません。
国内PETのリサイクル状況

PETというと、いちばんに思いつくのがPETボトルですが、実は国内に流通しているPET(172万t/年)のうち、PETボトルは約1/3程度(64万t/年)にすぎません。PETの大部分は、繊維やフィルム、シートといったほかの素材との複合素材として流通しています。しかし、PET以外の素材を含む複合素材はリサイクルが難しく、そのほとんどがリサイクルされず、焼却・埋立されています。

現在のPETのリサイクル方法として主流なのが、廃棄物を新しい製品の原料として再利用するマテリアルリサイクルです。マテリアルリサイクルはコスト・エネルギー的なメリットが大きく優れた方法ですが、品質の低下を伴いやすいため、高品質な再生PETの生産が限定的といった側面もあります。
したがって品質低下を伴わないケミカルリサイクルによる再生PETの生産が必要ですが、従来のケミカルリサイクルは200℃以上の高温が必要な手法が多く、副反応によりPET以外の素材を含む複合製品への適用が限定的であり、さらにコスト・エネルギー的なデメリットもあることが課題でした。
産総研の開発したPETケミカルリサイクル技術は
この課題を解決します
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革新的PETケミカルリサイクル技術を開発
この技術は、低温(50~70℃)・常圧という穏やかな条件でPETを選んで分解し、得られたモノマーを原料として再利用できる点に強みがあります。この技術により、これまで副反応による不純物のコンタミでリサイクルが難しかった複合繊維や染色繊維、フィルム製品など、多様なPET材料のリサイクルが可能になります。また、従来法よりも反応にかかるコストとエネルギーの両方を小さくできることが期待できます。

常温原料化法の原理

常温・常圧でケミカルリサイクルの反応が進む様子
産総研の反応の原理を簡単に説明すると、以下の図のようになります。

社会実装に向けたスケールアップ

これまでに産総研ではラボスケールおよびベンチスケールでの実証実験を完了しており、さらなる社会実装を目指してより処理量をスケールアップした実証を進めていきます。
新たなステージとして、一般社団法人低炭素投資促進機構の「令和7年度 産学官連携による自律型資源循環システム強靭化事業」に採択され、年間処理量10トン規模のセミパイロットプラントを建設します。
セミパイロットプラントで得られた知見をもとに、産業界の皆様と連携してパイロットプラントの整備、その先の商用プラントの稼働を目指します。

これまで、サーキュラーエコノミーへの取り組みは欧州の取り組みが先行し、日本はその後を追うという流れでした。しかし今、日本の強い技術やきめ細やかな物流・商流を活かし、フロンティアとして新たな産業を築く時ではないでしょうか。
産総研グループは、PETケミカルリサイクル技術の社会実装を通じて、産業界の皆様とともに日本の資源循環エコシステムを構築していきます。
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